STが上がっていない。だから、大丈夫だと思っていた
私は新人の頃から、心電図が好きでした。リズムなら、読める方だったと思います。ただ、12誘導は苦手でした。
心臓カテーテルの部署に配属されて、しばらく経った頃のことです。緊急の患者さんが来ると連絡があり、救急外来の心電図が、電子カルテで見られました。
私は、そばにいた仲間と、こう話していました。「STも上がっていないし、大丈夫だよね」「緊急にはならなそうだよね」。
そこへ、若い先生が来て、画面を見るなり、「これ、やばいです」と言って、救急外来へ向かいました。その患者さんは、緊急カテーテルになりました。
あとから、どんな心電図だったのか、振り返りをすることはありませんでした。それを、今でも、ふと思い出します。「なぜ、あのとき、振り返れなかったんだろう」と。
あのとき感じたのは、恥ずかしさと、つらさが混ざった、複雑な気持ちでした。そして、「自分は医者じゃないし」という、逃げの気持ちも、正直ありました。
でも、いちばん大きかったのは、この気づきです。私の中で、患者さんと、心電図が、つながっていなかった。
最初にやること① 「分からない」は、当たり前。その場に居続ける
心電図の勉強会に来てくださる、初心者の方が、いちばんつまずくのは、波形の読み方そのものではありません。
「分からない」と感じたときに、辞めてしまうこと。「私は、分からない人なんだ」と、決めつけてしまうことです。
私にも、循環器の言葉が、まったく分からなかった時期があります。「この人たちは、何を言っているんだろう」と思っていました。
でも、そこで仕事を続けていたら、少しずつ、耳が慣れてきました。専門用語が、日常の中で、自然と耳に入ってくる。そうするうちに、「あ、この言葉は、こういう意味だったんだ」と、つながっていきました。
英語圏に行って、ずっと「分からない」と言っていたら、話せるようにはなりませんよね。それと同じです。
分からないのは、当たり前。だから、その場に居続ける。分からないことから、逃げない。 これが、いちばん最初の一歩だと思います。
最初にやること② 分からなくても、最後まで読み切る
本でも、資料でも、少し難しいものに、挑戦することがあると思います。
私のおすすめは、分からないところがあっても、最後まで、読み切ることです。
最初のところで、つまずいても、最後の方で、「ああ、そういうことか」と分かることが、とても多いのです。分からない部分は、「分からないな」と思いながら、そのまま進んで、大丈夫です。
反対に、最初から完璧に理解しようとして、途中で止まってしまい、読めなかった本が、机の上に積まれていく。いわゆる「積ん読」は、もったいないと思います。
線を引いたり、ノートにまとめたりするのも、意味があって、するなら、いいと思います。私自身は、ノートにまとめたり、繰り返し読んだりすることが、とても苦手ですが、それは、人それぞれです。
最初にやること③ 最初は、パターンでいい。でも、暗記で終わらせない
心電図の波形は、暗記ではありません。
暗記しようとするから、臨床で使えないのです。同じ病態でも、波形のパターンは、人によって、違います。だから、暗記だけでは、「難しい」となってしまいます。
ただ、最初は、パターンで覚えて、「これは、これ」と決めてしまってもいいと、私は思っています。勉強には、段階があります。最初は、波形をたくさん見て、パターンに慣れる時期です。その次に、「なぜ、こうなるのか」を考える時期が来ます。
そのために、いいのは、今の自分が、どのあたりにいるのかを、客観的に教えてくれる人がいることです。
段階によって、必要なアドバイスは、まったく違います。「波形を、もっとたくさん見ましょう」という時期もあれば、「ロジカルに考えてみましょう」という時期もあります。
私は、勉強会で、よく「じゃあ、説明してみて」と言います。「右脚ブロックは、なぜ、そういう波形になるの?」と。聞かれた方は、嫌ですよね。形で覚えているだけ、ということが、多いからです。
でも、それは、レベルを上げるための、アドバイスです。もちろん、その方が、その段階に来ていることを、確認したうえで、です。初心者の方に、いきなり聞くことは、しません。
その先の段階。私が続けている、3つのこと
ここからは、少し先の段階の、お話です。私が、続けていることを、3つ、書きます。
1つ目は、結果が見える目標を決めること。 私は、コツコツ続けるタイプではありません。何か、達成したい目標があるときに、そこに向かって、没入するタイプです。心電図検定のように、結果が見えるものがあると、とても分かりやすくて、没入しやすいのです。
2つ目は、人に説明する前提で、知識を入れること。 インプットが3割、アウトプットが7割、くらいの感覚で、勉強してきました。臨床でも、心電図を見て、その場で判読して、「私は、こう思う」と、誰かに聞いてもらいます。今は、循環器の先生や、臨床工学技士さんに、話しかけて、説明してみることが多いです。
3つ目は、「なぜ?」を、一つずつ追うこと。 一つ分からないと、理解するまで、とことん調べます。勉強会でも、よく質問をします。講師の方からしたら、少し面倒なタイプかもしれません(笑)。
私が、なぜbeナビを始めたのかは、こちらに書きました。
分かりたい、その気持ちを、認めてあげてください
心電図が分かるようになると、現場での、景色が変わります。
カテーテル室の看護師として、先生が手術に集中しているときに、心電図の変化に、気づいて、報告できる。先生から、相談される。ディスカッションに、加われる。それが、私の、やりがいになっています。
最初にお話しした、あの日のことがなければ、今の私は、なかったかもしれません。
最後に、この記事を読んでくださっている、あなたへ。
分かろうとしているから、この文章を、読んでくれているんですよね。分かりたいんですよ。 その自分を、素直に認めてあげること。ここから、始めてみるのが、いいんじゃないかなと思います。
そして、自分の限界を、自分で決めないこと。これが、大事です。
be Navigatorでは、心電図の勉強会を、週5回、夜21:30から、Zoomで開いています。聞くだけ、カメラオフでも、大丈夫です。一緒に、学んだことを、言葉にしていけたら、うれしいです。
心電図の勉強を、もっと楽しくする文房具『ECG♡PASS』の開発の話は、こちらです。

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